複数の情報源をAIで比較し、違いと共通点を整理する
同じテーマについて書かれた複数の記事やレポートを、AIに一つずつ比較させて違いと共通点を洗い出す手順を、プロンプト例つきで説明します。
同じテーマを調べていると、記事やレポートによって数字や結論が微妙に違うことがよくあります。3つ、4つと開いたタブを行き来しながら「どこが違うのか」を手作業で突き合わせるのは時間がかかりますし、見落としも起きやすい作業です。オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所の調査でも、読者が複数の報道を比較して真偽を判断する行動そのものが年々重要になっていると指摘されています※2。AIに複数の情報源を渡して比較表を作らせれば、この突き合わせ作業をかなり短縮できますが、やり方を誤ると「違いがあるのに似ていると言われる」結果になりかねません。
AIに複数の情報源を比較させるときは、比較の軸をこちらが指定し、出典つきの表形式で出力させることが要です。AIは長い文章を要約する過程で細かな差異を丸めてしまう傾向があるため、出力された「共通点」ほど原文に立ち返って確認する必要があります。
比較を始める前に整理すべきこと
比較作業に入る前に、素材と道具の両方を整えておきます。ChatGPT・Claude・Geminiのいずれも、PDFやテキストファイルを複数まとめてアップロードし、それらを横断的に参照させる機能を備えています。ファイルの読み込み方法や上限は各サービスのヘルプページで随時更新されるため、実際の操作画面で確認してください。
用意する情報源は、できれば原文に近い形(記事本文、レポートのPDF、公式発表のテキストなど)で3〜5件程度に絞ります。件数が多すぎるとAIが後半の情報源を軽く扱う傾向があるため、まずは少数精鋭で試すのが安全です。また、社外秘の資料や個人情報を含む文書を一般公開のAIサービスに投入しないことも前提として押さえておきます。
手順:AIに複数の情報源を比較させる
ステップ1 情報源をテキスト化して用意する
スクリーンショットではなく、コピー&ペーストできるテキストかPDFの形で用意します。画像化された資料はOCR精度に依存するため、数字の読み取りミスが起きやすくなります。
ステップ2 比較の軸をこちらが決めて渡す
「違いを教えて」とだけ頼むと、AIは目についた表面的な差を拾いがちです。比較したい観点(発表日、対象範囲、結論、根拠となるデータの出典など)を先に箇条書きで渡すと、出力の精度が上がります。
ステップ3 出典つきの表形式で出力させる
比較結果は文章より表のほうが見落としに気づきやすくなります。各セルに「どの情報源のどの部分から読み取ったか」を書かせると、後で検証しやすくなります。
ステップ4 一致点と相違点を分けて聞き直す
一度の出力で満足せず、「共通点だけを別にまとめて」「相違点だけを別にまとめて」と分けて聞き直すと、両方が一つの回答に混在して埋もれるのを防げます。
プロンプト例
次のようなプロンプトを土台に、比較したい観点を自分の調べ物に合わせて書き換えて使ってください。
以下は同じテーマについて書かれた3つの情報源です。
それぞれの[発表日/対象範囲/結論/根拠データ]を比較し、
表形式で出力してください。表には「情報源名」「該当箇所の
引用または要約」「出典位置(見出しや段落)」の列を含めてください。
最後に、3つの情報源に共通する点と、食い違っている点を
それぞれ箇条書きで分けて示してください。
情報源1: [ここに本文を貼り付け]
情報源2: [ここに本文を貼り付け]
情報源3: [ここに本文を貼り付け]
出力を確認する
表ができあがったら、そのまま使わずに一次情報と突き合わせます。特に「共通点」として提示された項目は要注意です。AIは長文を圧縮する過程で、似ているが実は条件が異なる記述を同一視してしまうことがあります。OpenAIが公開したGPT-4のシステムカードでも、モデルが自信を持って誤った内容を提示する挙動が課題として明記されています※1。
一方で、相違点として挙げられた項目のほうは、実際に原文を読み返すと単なる表現の違いにすぎないケースもあります。表を鵜呑みにせず、少なくとも結論に関わる箇所だけは原文の該当段落を自分の目で確認する、という一手間を省かないことが重要です。
つまずきやすい点
もっとも起きやすい失敗は、情報源の分量に差がある場合に、短い情報源の記述がAIの出力から抜け落ちることです。5件のうち1件だけ短い一次資料を混ぜると、比較表からその情報源の視点がそっくり消えていることがあるので、出力後に「各情報源から最低1点ずつ反映されているか」を数えて確認するとよいでしょう。
また、比較対象が古い記事と新しい記事の場合、AIは日付を明示的に伝えない限り、どちらが最新の情報かを推測で判断してしまいます。プロンプトの中で各情報源の発表日を必ず添えておくと、この種の誤認を減らせます。
次の一歩
比較表で違いが見えてきたら、次は「なぜ食い違っているのか」を掘り下げる段階に進みます。複数ソースの内容をAIで分析し矛盾点を洗い出す手順では、比較の一歩先にある矛盾点の分析方法を扱っています。また、そもそも比較に使う情報源自体をどう選ぶかで悩んだ場合は、情報源の信頼性をどう見極めるかも合わせて参考にしてください。
参考文献
- ※1. OpenAI. "GPT-4 System Card." OpenAI, 2023
- ※2. Reuters Institute for the Study of Journalism, University of Oxford. "Digital News Report 2024."
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Tsurugiya
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